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IXV開発を通じて感じること。AIは「置き換え」ではなく「乗数」と考える-gpt-oss120bをMacStudio 512GBで動かした
完全ローカルのAIで未来が手にしてみて感じた
2025年8月にOpenAI社から新しくgpt-ossがリリースされました。それをきっかけに、MacStudio 512GBを購入しました。
いままででは、手に入らなかった高性能なAIモデルであるgpt-ossが、いままで手に入らなかった512GBという広大なメモリ空間を持つMac Studioの上で、驚くほど活躍する様子を目の前で見た、そんな驚き、感動を素直に、動画にして、私たちのYouTubeチャンネル、Tech千一夜に投稿しました。
先日、ある方に送ったメールの中でも、上記動画とともに、自分でも整理できていなかった思いを言葉にする機会がありました。
そのメールの書き出しは、Mac Studioを2台も導入しているのですが、それはYouTubeのためではなく、私たちが開発を進めているAIツール「IXV」の研究開発の一環です、からでした。
IXVの開発を通じて私が強く実感しているのは、AIは「人間の代替」ではなく、人間の能力を拡張する「増幅装置」、つまり力の乗数だということを、お伝えしました。
AIは「掛け算はできるけど、足し算はできない」
この気づきは、若手エンジニアを、たとえば、IXVの開発チームに迎えるべきかどうかを考えたときの感覚にも通じます。経験や知識がまったくゼロの状態をいくらAIで増幅しても、成果はゼロのままです。むしろ、経験と理解を積み重ねた人こそ、AIを使うことでその力を何倍にも増幅できます。だからこそ私は今回の書籍執筆において、肩書きだけではなく、実際に経験を持った人に限定して依頼することにしました。AIの本質も同じで、「土台」があって初めて乗数効果を発揮するのです。
すなわち、「掛け算はできるけど、足し算はできない」のです。
変わらない価値のあるスキル
著名な開発者であるKentbeck氏は、「スキルの90%は価値を失い、10%は1000倍に価値が増す」と言っているそうです。私自身もそう感じており、AI時代において本当に価値があるのは、問題の本質を見抜く力やアーキテクチャを設計する力、コードや成果物の品質を見極める力、要件を整理・構造化する力、そして最終的に人に伝える力です。これらは決して新しいスキルではなく、昭和のウォーターフォール時代から重視されてきたものです。むしろ、AIの登場によって一周回って再びその重要性が際立っていると感じます。
人間とAIの最適な関係
もちろんAIには限界があります。同じ指示を与えても異なる結果を返すことがあり、文脈や制約を完全に理解することはできません。Googleで開発を行っているAddy Osmani氏がXなどで指摘するように、AIは機能的なコンセプトの70%まではスムーズに到達できても、残りの30%は人間の専門知識に委ねられます。だからこそ、AIに任せきりにするのではなく、境界を明確に設定し、人間の判断を必ず介在させることが大切です。
IXVの開発においても、スコープを小さく限定して進めたり、段階的に設計・実装・レビューを繰り返したりすることで、AIと人間の役割分担をうまく機能させています。こうした工夫がプロジェクト全体の安定と成果につながっています。
継続的な学習が欠かせない
もうひとつ、とても大切なことがあります。私は、AIに関するコンサルティングを請け負うことがあります。そこで毎々申し上げていること、それは、AIは日進月歩で進化しており、学び続ける姿勢なしには追いつけない、ということです。プロンプトの工夫、複数のAIツールの連携、そしてAIが生み出した成果物の品質をどう担保するか──これらを常にアップデートし続ける必要があります。IXVもまさにその流れの中で進化しており、AIを取り巻く技術と方法論は止まることなく変わり続けています。
手前味噌ですが、餅は餅屋に、AIはエルブズにお任せください、そんな気持ちです。
まとめ:AIは増幅装置である
AIに仕事をすべて委ねることも、逆に、AIを拒絶することも正解ではありません。人間にしかできない判断や理解を土台に、AIの力を「増幅装置」として最大限に活用する。そのためには、境界を明確にし、リスクを制御しながら、変化に対応できるように学び続ける姿勢が求められます。
IXVを開発するなかで私が強く感じていること、AIはゼロから価値を生み出す存在ではなく人間の持つ力を倍増させる存在だということ、すなわち、経験や知識という土台がある人にとって、AIはゴールを達成するためのこれまでにない強力な「増幅装置」となるのです。