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この記事について
このブログシリーズでは、注目すべきオープンソースソフトウェア(OSS)を定期的に紹介していきます。今回で第9回目となる今回は、画像解析分野において注目の「Detectron2」に焦点を当てます。
Detectron2は、さまざまな視覚認識タスクに対応したプラットフォームで、特に物体検出やセグメンテーションにおいて高い性能を発揮するライブラリです。近年、データ処理や機械学習が進化を続ける中、画像解析の重要性が増しており、そのニーズは多岐にわたります。Detectron2は、さまざまな研究プロジェクトや商業アプリケーションの基盤として利用されており、その柔軟性と拡張性から、多くの開発者や研究者に支持されています。
この記事では、Detectron2の概要や特長、さらにこのツールがなぜ重要なのかについて詳しく掘り下げていきます。このライブラリが提供する機能や使い方を理解することで、開発者や研究者が視覚認識技術を活用する手助けとなるでしょう。
リンク:https://github.com/facebookresearch/detectron2


本コンテンツは、弊社AI開発ツール「IXV」を用いたOSSツール紹介です。情報の正確性には努めておりますが、内容に誤りが含まれる可能性がございますのでご了承ください。
1. Detectron2の概要
Detectron2は、オブジェクト検出、セグメンテーション、およびその他の視覚認識タスクを行うためのプラットフォームです。このツールは、Facebook AI Researchによって開発されており、先進的な検出およびセグメンテーションアルゴリズムを提供します。Detectron2は、Python言語で書かれ、人気の深層学習ライブラリであるPyTorchをベースとしています。
1.1 機能の詳細
- オブジェクト検出: 物体を特定し、その境界ボックスを生成します。
- インスタンスセグメンテーション: 画像内の物体をピクセル単位で識別し、各インスタンスを区別します。
- パンオプティックセグメンテーション: 物体検出とインスタンスセグメンテーションを統合した新しいアプローチを提供します。
- キーポイント検出: 人物などの姿勢推定のためのキーポイント(関節など)を検出します。
- その他の高度なアルゴリズム: DensePose、Cascade R-CNN、PointRend、DeepLab、ViTDet、MViTv2などの最新技術をサポートしています。
Detectron2は、Apache 2.0ライセンスの下で公開されており、研究目的や商用利用を含め、幅広い用途で利用できます。また、モデルズーと呼ばれる事前学習済みモデルの大規模なセットも提供されており、すぐに利用可能です。
2. セットアップ手順
Detectron2のインストールは、環境に応じていくつかの方法があります。公式ドキュメントに従って、最適な方法を選択しましょう。
2.1 必要な環境
- Python: Python 3.6以上が必要です(Python 3.9までの互換性が確認されています)。
- PyTorch: 1.8以上のバージョンが推奨されています。
- CUDA: GPUを使用する場合、CUDAがインストールされている必要があります。
- その他の依存関係: OpenCV(視覚化に必要)やCython、pycocotoolsなど。
2.2 インストール手順
Detectron2は複数の方法でインストールできます。以下に主な方法を紹介します:
2.2.1 Pipを使用したインストール(推奨)
最も簡単な方法は、GitHubリポジトリから直接インストールする方法です:
pip install 'git+https://github.com/facebookresearch/detectron2.git'
2.2.2 リポジトリをクローンしてインストール
開発版や最新版を使用したい場合は、リポジトリをクローンしてインストールすることもできます:
git clone https://github.com/facebookresearch/detectron2.git
cd detectron2
pip install -e .
2.2.3 Dockerを使用する方法
公式Dockerfileを使用して、簡単にDetectron2の環境を構築することもできます。これは特に環境構築が難しい場合や、一貫した環境が必要な場合に便利です。
2.3 インストール時の注意点
- Windows環境: Windows上でのインストールは公式には完全にサポートされていませんが、対処法が存在します。Visual C++ Build Toolsのインストールなど、追加の設定が必要になる場合があります。
- CUDA互換性: PyTorchとCUDAのバージョンの互換性に注意が必要です。不一致がある場合、
python -m detectron2.utils.collect_env
コマンドでデバッグ情報を確認できます。 - GPU互換性: 異なるGPUアーキテクチャでコンパイルされたコードは互換性がない場合があります。
TORCH_CUDA_ARCH_LIST
環境変数の設定が必要になることがあります。
3. 簡単な使い方
Detectron2を使用する際の基本的な流れを紹介します。事前学習済みモデルを使った推論から、カスタムデータセットでの学習まで、様々なユースケースに対応できます。
3.1 基本的な使用例
3.1.1 事前学習済みモデルを使った推論
以下は、事前学習済みモデルを使用して画像に対して推論を行う基本的なpythonコードです:
from detectron2.engine import DefaultPredictor
from detectron2.config import get_cfg
from detectron2.data import MetadataCatalog
import cv2
# 設定の初期化
cfg = get_cfg()
cfg.merge_from_file("configs/COCO-InstanceSegmentation/mask_rcnn_R_50_FPN_3x.yaml")
cfg.MODEL.WEIGHTS = "detectron2://COCO-InstanceSegmentation/mask_rcnn_R_50_FPN_3x/137849600/model_final_f10217.pkl"
cfg.MODEL.DEVICE = "cuda" # または "cpu"
cfg.MODEL.ROI_HEADS.SCORE_THRESH_TEST = 0.5 # 検出の閾値を設定
# 予測器の作成
predictor = DefaultPredictor(cfg)
# 画像の読み込み
image = cv2.imread("input.jpg")
# 推論の実行
outputs = predictor(image)
# 結果の表示(必要に応じて)
from detectron2.utils.visualizer import Visualizer
v = Visualizer(image[:, :, ::-1], MetadataCatalog.get(cfg.DATASETS.TRAIN[0]))
out = v.draw_instance_predictions(outputs["instances"].to("cpu"))
cv2.imshow("Result", out.get_image()[:, :, ::-1])
cv2.waitKey(0)
3.1.2 コマンドラインからの学習
Detectron2は、コマンドラインからモデルを訓練するためのスクリプトも提供しています:
cd tools/
./train_net.py --config-file ../configs/COCO-InstanceSegmentation/mask_rcnn_R_50_FPN_1x.yaml --num-gpus 1 SOLVER.IMS_PER_BATCH 2 SOLVER.BASE_LR 0.0025
3.1.3 カスタムデータセットでの学習
独自のデータセットを使用したい場合は、公式のColabノートブックが参考になります。データセットの登録からトレーニングまでの流れを詳しく解説しています。Detectron2は柔軟なAPI設計により、カスタムデータセットやモデルの実装が容易になっています。
結論
Detectron2は、オブジェクト検出やセグメンテーションのための強力で柔軟なプラットフォームです。高性能なアルゴリズムを簡単に利用でき、さまざまな研究や実用的なアプリケーションに役立ちます。事前学習済みモデルが豊富に用意されており、迅速な実装が可能です。
最近のバージョンでは、トランスフォーマーベースのモデルやMViTv2などの最新技術もサポートされ、継続的に進化しています。また、プロジェクトディレクトリには多くの実装例があり、Detectron2を基盤とした独自のプロジェクト開発にも役立ちます。
Apache 2.0ライセンスの下で利用可能であり、オープンソースコミュニティによって支えられています。興味がある方は、ぜひ公式GitHubリポジトリ(Detectron2 GitHub)やドキュメント(Detectron2 Documentation)を訪れてみてください。最新の画像認識技術を活用したい研究者や開発者にとって、Detectron2は強力な選択肢となるでしょう。