技術解説:2025年2月版 RAGの現在地〜RAGについて考える〜

はじめに

実は、当社は、最近GPUを使ったファインチューニングに取り組んでいます。一方で、昨年12月末までは、Retrieval-Augmented Generation(RAG)に力を入れていました。

最近RAGについて、詳細に技術を追いかけていませんでしたので、ここで、一度整理してみました。多少遅れている部分は、あるかもしれませんが、緩やかにご覧ください。

RAGとは

RAGとは、情報検索と生成AIを統合することで、より信頼性が高く文脈に適した応答を提供する技術です。近年、RAGは進化を遂げ、さまざまな新技術や手法が登場しています。

RAGをとりまく/実現する技術

現在のRAG技術は、多様なアプローチを組み合わせて進化しています。以下に主要な手法を紹介します。

1. シンプルRAG

最も基本的なRAGの実装で、PDFやテキストデータから情報を取得し、検索したデータを基にLLMが応答を生成します。このアプローチは、効率が高く、情報の整合性を確保しやすい特徴があります。

2. クエリ変換(Query Transformation)

ユーザーの入力クエリを最適化し、検索の精度を向上させる手法です。たとえば、類義語や関連語を追加することで、より適切な情報を取得することが可能になります。

3. 文脈強化(Context Enhancement)

検索結果に対して、追加の文脈情報を付与することで、LLMの生成精度を向上させます。具体的には、検索した情報の前後関係を考慮し、より自然な応答を生成する手法です。

4. 融合検索(Hybrid Search)

ベクトル検索(Semantic Search)とキーワード検索(Lexical Search)を組み合わせた手法で、意味的な関連性と厳密な一致の両方を考慮した検索が可能になります。これにより、より多様な情報源から正確なデータを取得できます。

5. 再ランキング(Re-Ranking)

検索結果を再評価し、最も関連性の高い情報を上位に表示する技術です。機械学習モデルを利用して、検索結果のスコアを再計算し、適切な順位付けを行います。

6. マルチモーダルRAG(Multi-Modal RAG)

テキストだけでなく、画像や音声データを活用するRAGシステムです。例えば、PDF内のテキストと画像を組み合わせてクエリに関連する情報を抽出し、より高度な応答を生成する技術が登場しています。

7. 長文対応RAG(Long-Context RAG)

通常のLLMでは処理できるコンテキストの長さに制限がありますが、新たな技術により、より長い文脈を保持したまま検索と応答生成を行う手法が発展しています。

RAG技術の進化と今後の展望

RAGは、従来のLLM単独の応答生成よりも信頼性が高く、事実ベースの情報提供に適しています。またGPUによる学習を避けることもできるので、当社のように資金的な体力が乏しい企業には、重要なものでした。

今後も、RAGについての取り組みは、さまざまな企業で必要になるかと思います。そのため、進化も止まることを知らず、今後の進化の方向性として、以下のような技術が期待されています。

  • リアルタイムデータの統合:最新情報を即座に取得し、AIの応答に反映する技術の発展。最近では、Grok3あたりがそれに近い機能を実現しているように見えます。
  • プライバシー保護強化:個人データや機密情報の扱いに配慮したRAGの実装。ChatGPTやClaudeは、法令のみならず倫理的な観点からも、強化しているように見えます。
  • エッジコンピューティング対応:クラウド依存を減らし、ローカル環境でもRAGを利用可能にする技術。Apple社のApple intelligenceは、クラウドとローカルを上手に組み合わせようとしていると考えています。

上記のように、今後もRAG技術は進化を続け、多くの分野で活用が広がることが予想されます。

皆様も、本記事で紹介した技術を参考に、RAGの最新動向を把握し、今後の活用を検討してみてください。

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