かつて若かりし日、池袋の大勝軒で一度だけ食べたラーメン。
その店はつけ麺で有名でしたが、なぜか私はラーメンを選びました。当時、入社してまもなく、右も左も分からないまま、スーツに身を包み、がむしゃらに働いていました。厳しい上司、慣れない業務、深夜まで続く残業——そんな日々の中、業務の合間に列に並んだのが大勝軒でした。
その後、茨城の「大勝軒」と名のつく店には何度か訪れましたが、池袋の本店へ行くことはありませんでした。そして時は流れ——。
渋谷に大勝軒直系の店があることは知っていました。何度か店の前まで来ては、なぜかためらって引き返していた私。そんな私が今日、ついに一人で足を踏み入れる決心をしました。
箸を持ち、一口啜ります。
その瞬間、走馬灯のように池袋での記憶が鮮やかによみがえりました。店主の優しい笑顔、店内の雰囲気、そして何より、あの時の味。疲れきった体に染み入るスープの温かさ。ラーメンを専門的に食べ歩くわけではない私ですが、この一杯に込められた想いは確かに伝わってきます。
気がつけば、目から涙がこぼれていました。恥ずかしさを感じつつ、周りに気づかれないようそっと涙を拭いながら食べ進めました。まさか、ラーメンを食べながら泣くことになるとは。
ただの一杯のラーメンが、これほど深い感動を呼び起こすとは思いもしませんでした。大勝軒という名店が紡いできた歴史と伝統、そして私自身の思い出が、この一杯の中で見事に調和しているのを感じました。あの頃の苦労も、今では懐かしい思い出へと変わっています。
ありがとう、大勝軒。あの日の味を、今日また味わえて本当に幸せでした。