人の心や気持ち、考えは、外からはわからないことがあります。

2020年3月に、京都府城陽市のコンビニエンスストアで重症急性呼吸器症候群(SARS)に感染しているように装い営業を妨害したとして、偽計業務妨害の疑いで逮捕された60代男性が不起訴処分になったそうです。男性は逮捕時から「『サーズ』とは言っていない」と主張、店内の防犯カメラに記録された音声が冤罪(えんざい)を晴らす証拠となったとのことでした。

そもそもこの男性は、医療従事者、具体的には眼科医院で検査技師として働いており、直前、感染力が強い流行性角結膜炎にかかり、勤務先からは仕事を休むように言われていたそうです。休みとはいっても、支払いを行う必要があり、コンビニに行き、よかれと思って、レジにいた女性店員に「僕、さわるとうつるので、これ(払い込みのためのチケットと紙幣)を消毒してください」と伝えたことが、大騒動になってしまったそうです。

コンビニでは、男性が帰った後、この女性が店長に報告、店長はその後2時間かけ消毒、警察に通報、4日後に逮捕ということになってしまいました。

この男性は、逮捕に伴い、失職、えん罪がはれた今も、復職という状況にはなっていません。

誰が良いとか、悪いとか、言いたいわけではありません。なにをどうしても、この男性が失ったものは、もう取り戻せない、そこだけが重要だと感じています。どんなに保証しようとも、戻らないのです。一度、失ったものは、戻らないのです。

私たちの周りにも、同じようなことがたくさんあります。仕事で、プライベートで、ほんのちょっとしたことで、誤解すること、されることがたくさん起きています。大小たくさんのことが失われています。

仕方が無いこともあるでしょうが、仕方が無い、では、済まされないこともあるような気がしてなりません。

失ってはいけないこと、それに気がつけるよう、注意深く、周りに耳を傾けていきたいところです。