1999年頃に起業した際に、ポーターの書籍をかなり読み込みました。起業前の数ヶ月ほとんど持ち歩いていたといってもいいかもしれません。
競争優位の戦略―いかに高業績を持続させるかです。当時は、私は、日本最大のSIerの社員でもありましたので、どうすればインターネットというテクノロジーの中で、巨大戦艦が生き延びていけるかという観点で、この本を読んでいたように思います。この時期には、私はかなりの書籍量を読み、実地として起業の中で試しているわけですが、それから、15年、時代が変わってきたにもかかわらず、少々勉強をさぼってしまっていたかもしれません。今や、この書籍は古典になってしまっていたようです。
先日久しぶりにハーバードビジネスレビューを購入してみると、ポーターのことが書いてありました。なるほどとおもい、ビジネスモデルの書籍をいくつか読み、いくつかもやもやが晴れていきました。一番腹落ちしたのは、このエントリのタイトルにした競争の型、です。この競争の型の考え方をすれば、大企業が勝てないのではなくて、戦術が違っていただけの可能性があると思うに至りました。戦い方を間違えていれば、勝てる可能性は低くなる、あたりまえの話だと。
目次
競争の型の起源
1986年ですから私が起業する前となりますが、ジェイ・バーニーというアメリカの経済学者がその起源とのことで、ポーターとは、ポーターVSバーニー論争などとも言われているようです。
上記の書籍も、少し古めの2003年ですが、「経営資源に基づく戦略論」(Resource Based View、以下RBV)と呼ばれる理論を説明したものです。かなりの大作ですが、一般論も多数書かれており、買っていて損はないと思います。
戦略の型(1) IO(industrial organization)型
特徴としては、下記の通りです。
- 事業環境の不確定要素が少ない
- 参入障壁が高い
- 2~5社で市場を独占している
- 企業は、緩やかに差別化をすることで過当競争を避ける
- 結果として、安定的な市場となる
たとえば、日本のビール業界をイメージしていただけるとわかりやすいかと思います。このような市場の場合、ポーターのSCP(Structure-Conduct-Performance)戦略が有効だと言われています。SCPとは、それぞれ
- 市場構造(Structure):市場規模、競合企業数、製品の差別化要因、参入コスト、市場の集中度
- 市場行動(Conduct):価格政策、R&D、投資、マーケティング
- 市場成果(Performance):生産効率、資源配分の効率、雇用水準、技術進歩のスピード収益性
を考慮し、戦うということです。よく見かけるのは、自社の「ポジショニング」をしっかり理解し、戦う方法。まさに最初の起業時に私が書いた図版にもこれが含まれておりましたが(笑)、縦軸横軸を決め、コンペティタと自社を比較し、どのようなアクションをとるのかをきめていくようなスタイルです。つきつめていくと、それは、
- 差別化戦略
- コスト・リーダーシップ戦略
に帰着していきます。どんな市場も、立ち上げ時はこんな感じではない!のですが、いつかは成熟した市場になるわけで、ペイパル創業者ピーターティールによると、将来の市場成熟を考えた上で、起業せよ、独占を狙え、というのがおすすめなようです。
戦略の型(2) チェンバレン型
日本の多くの市場が、このチェンバレン型であると言われています。
- 比較的参入障壁は低く
- 複数の企業が存在し、
- 差別化しながら激しく競争する
数社による寡占がまだ起きていない、もしくは起きない市場です。
チェンバレン型の競争の型では、バーニーが提案したRBV(Resource Based View)に基づく戦略が有効だと言われています。前述の書籍に登場します。他社との比較すなわちポジショニングが大切なわけではなく、結局、自社の力、リソースが大事だよね、というお話です。現場力で勝ってきたたとえばトヨタなどが、このRBVの成功例としてよくあげられるようです。
戦略の型(3) シュンペーター型
これまでご紹介した市場は、どれもある程度の成熟した市場になるわけなのですが、まだ登場したての市場や製品の場合、あまりマッチすることはありません。2000年前後のインターネットを思い浮かべていただければ理解しやすいでしょう。そのような市場は、
- 日進月歩で技術革新が起こる
- 顧客ニーズなどにも不確定要素が多い
- 参入障壁も低い
という特徴があります。不確実性がきわめて高いため、他の2つの戦略のような、あらかじめ将来を予見しながら戦略立案をすることが困難です。今から思うと最初の起業時、2000年前後に、インターネットという市場で、よくポーターの戦略に則った事業計画を書いたものだと我ながらあきれてしまいます。
実際、私もそうなのですが、シュンペーター型の市場においては、スクラップアンドビルド、トライアンドエラー、とりあえずやってみる、ピポットをしまくる、そんな中から「当たり」を探りつつ、イノベーティブな製品・サービスを生み出す、言ってみれば宝探しのような活動の方が重要です。
ベンチャー的な言葉でいえば、リーンスタートアップといえるでしょう。
経済学的な観点で言えば、リアル・オプション理論ということになるでしょう。
がこれに近くなります。端的にいえば、双方とも、
「わからないときには、とりあえずやってみて、市場に出そう」
もっとも出すだけでは意味が無くて、
利用者からのフィードバック、改善、必要に応じてピポット
を続けていきます。某ネット企業の代表が、「いい風が吹いたときに、沖にいなければその風をつかめない」とおっしゃっていたことを思い出します。まさにチャンスを狙うための戦略なわけです。
上記の書籍は、シュンペーター型の市場に対してのアプローチが記述されています。
まとめ 〜新しもの好きはシュンペーター型を狙え〜
私のキャリアのスタートは大企業だったわけなのですが、今はベンチャーよりの行動をとることが多いです。それは、上記競争の型でいうと、シュンペーター型の市場を選択しているとも言うことができます。シュンペーター型の市場の方が、当たりを引いたときに大きいハイリスクハイリターンであることがその一番の理由にも思いますが、もしかしたら・・・
単にシュンペーター型の市場とそこで起きうることが好き
なのかもしれないと、思いつつあります。R&D的に小さなサイクルをくるくる回しながら、日々新しいことに触れられることも、好き、の一つなのかもしれません。私のような新しもの好きは、シュンペーター型を意識して狙った方が、いろいろと悩まなくていいようにも思います。
コンビニで新しい商品が出てたらとりあえず買ってしまう人、、、悩んでないでシュンペーター型のアクション取ったらいいかも!ですよ。